鍋店酒蔵
~SAKE文化の復活再生プロジェクト タイ王国編~
鍋店(なべだな)は、江戸時代から続く老舗蔵です。長い歴史にあぐらをかくことなく、挑戦し続けることで生み出された「不動」は、多くの日本酒ファンから支持を得る人気銘柄。「不動」が誕生するまでの背景や、こだわりについて紹介
酒造りのこだわり
第19代蔵元大塚 完
元禄2年(1689年)鍋店は成田山新勝寺の門前に蔵を構え、酒造りを始めましたが、現在は田園の広がる香取郡神崎町(こうざきまち)に 酒蔵を移し「仁勇・不動」を醸造しています。酒造りは、昔から新潟杜氏や南部杜氏に代表される杜氏さん達にお願いしてきましたが、『自分たちの力で個性のある酒』を造りたくて、平成9年より全て自社スタッフによる酒造りを開始しました。蒸米・麹・もろみに至る酒造りという『生まれ』から、おり下げ・濾過・火入れ・貯蔵、そして瓶詰めに至る『育ち』まで、全ての工程を自社スタッフで行い、各工程での酒の品質状況を常に把握することにより、多くのお客様から『おいしい!』と感じて頂ける製品を出荷することを第一に考えています。人と人の間に酒があり、心と心の間に酒がある。そんな心に響く酒を造ることが私の使命です。
鍋店の歴史
鍋店(なべだな)の由来
当社の商号であるなべだなは古く江戸時代に遡り、金座や銀座、または釜座などのいわゆる『座』の一つである『鍋座』に由来します。当時鉄類は有事の際には武器製造の重要な材料であった為、幕府はこの鉄類の製造権利を信用ある地方の素封家に与えていましたが、当社の祖先はその『鍋座』を幕府より預かり管理しておりました。一方、元禄2年(1689年)に佐倉藩より現在の製造免許にあたる酒造株(1,050株)を戴き、成田山門前にて醸造を開始しました。当時老舗のことをお店(おたな)と呼んでいましたが、鍋座の『鍋』とおたなの『店』が結びついて『鍋店』(なべだな)と呼ぶようになったと言い伝えられています。
鍋店の酒ができるまで
~杜氏・蔵人~
昔ながらの「杜氏さん・蔵人さん」にお願いしての酒造りから、全て自社スタッフでの酒造りへと転換を果たしたのが平成9年。以来、製造計画から酒造り、そして最終的な製品出荷まで一環して社員で行えるようになり、酒質の向上や製品管理の点において少しずつですが確実に成果を出しています。またこの間に蓄積した詳細な製造管理データーは蔵としての宝物に成っていますし、酒造りに従事する社員の早期育成も可能になって来ています。
鍋店の酒ができるまで
~酒造りに適したお米は~
日本酒造りには、酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)と呼ばれる特別に栽培されたお米を好んで使用します。山田錦・五百万石・美山錦などがその代表的な品種ですが、この酒造好適米は一般に食べられているお米と比較して、大粒でやわらかく、タンパク質の含有量が少ないという性質を持っていて、しかも米粒の中心部分に白くうるんだ「心拍=しんぱく」が有るのが最大の特徴です。当社ではこの酒造好適米の中で、兵庫県産の山田錦・秋田県産の美山錦、酒こまち・千葉県産の総の舞などを全て契約栽培にて購入し、酒造りに使用しています。
長き歴史を持つ老舗
~新たな挑戦として開発した「不動」~
鍋店では、創業当初は「蓬莱山(ほうらいさん)」という銘柄を主力とし、成田山の参拝客を中心に人気を博し、江戸末期には1,000石を超える規模に。その後、明治期には千葉県香取郡神崎町と兵庫県魚崎町、大正期には千葉県印旛郡にも蔵を設けるなど、順調に規模を拡大しました。
第二次大戦中に企業整備令を受けてからは、敷地が広く、水質にも恵まれた神崎蔵に集約し、この蔵で造る「仁勇(じんゆう)」を主力銘柄とします。
こうした歴史を礎として、2004年に新たに開発したのが「不動」。まさに、老舗の新たな挑戦と言える銘柄です。
杜氏制を廃止
~自らの手で個性ある日本酒を造ろう~
「不動」や「仁勇」を醸すにあたり、蔵元が大切にしているのは、心に響く日本酒を造ること。「自らの手で個性を感じる日本酒を造りたい」という想いから、1997年に杜氏制を廃止したことが、鍋店の大きな転機になっています。
日本酒造りの世界では、専門家である杜氏を外部から招聘することが一般的ですが、鍋店では、麹やもろみ造り、火入れや貯蔵、瓶詰めに至るすべての行程を自社スタッフが担い、自分たちが納得のいく日本酒造りに邁進しています。
各種品評会でも高く評価
~専門店向けに開発された、こだわりの酒~
「不動」や「仁勇」を飲むと、どこか温かい気持ちになるのは、日本酒造りに対する蔵元の真摯な姿勢の表れだと言えるでしょう。
そうした鍋店の酒造りは、品質面でも高い評価を得ています。「不動」は「全国新酒鑑評会」や「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」、「全国燗酒コンテスト」など各種の品評会で受賞を果たすなど、その名のとおり、評価を不動のものにしています。